コラム
知っておきたい小水力発電などの再生可能エネルギーの資源量と、そのポテンシャル
2019年3月5日 文 スタッフ-hayashi
無限のはずの再生可能エネルギーに『資源量』があるって、どういうこと?
小水力発電などに使用される、地球にやさしいエコなエネルギー資源である再生可能エネルギー。
風力、太陽光、水力など、自然界に半永久的に存在するものをエネルギー源としていますから、そのエネルギー量は、
実質、無限のはずです。
しかし、実際にはそれぞれの再生可能エネルギーについて、資源量という上限のようなものが存在しています。
これは一体、どういうことなのでしょうか?
再生可能エネルギーを利用するには設備の設置が不可欠
実は、再生可能エネルギーの利用には、ある制約が伴います。
それは、再生可能エネルギーを利用するには、それぞれの再生可能エネルギーの利用に特化した
発電用の設備の設置が不可欠であるということです。
発電用の設備には、大小さまざまな規模のものがあります。
そして、それぞれの規模に応じた設置用のスペースが必要となってくるのです。
設置用のスペースを確保できない場所や、スペースはあっても設置工事のための機材の搬入等が困難な場所では、発電用の設備の設置は難しいと思った方がよいでしょう。
また、発電するのに
十分な量の再生可能エネルギーの確保が可能なのか、ということも重要です。
たとえば、比較的、発電の規模が小さい小水力発電の場合でも、ある程度の流量をコンスタントに確保できない場所では十分な成果を得るのは難しい、とされています。
石油や石炭などと違い、再生可能エネルギーには資源を採り尽くして無くなってしまうという心配はありません。
しかし、設置するためのスペースや、発電に適した量の再生可能エネルギーをコンスタントに確保できる場所でないと実現は難しい、という
制約があるのです。
そのため、その国や地域に設備を設置して
実際に再生可能エネルギーを利用できる場所がどの程度あり、それらの場所を全て利用した場合に、
どのくらいの発電量が見込めるのかということが、その国の再生可能エネルギーの資源量ということになります。
日本における小水力発電の資源量の実際の数値とは
では、日本における小水力発電の実際の資源量は、どのようになっているのでしょうか。
そもそも、小水力発電の定義には2種類あります。
昔からの世界的な傾向としましては、
出力10,000kw以下のものを『小水力』と呼んでいます。
しかし、日本では2008年4月施行の新エネルギー法の施行令改正などにより、
出力1,000kw以下のものが『小水力』とされています。
また、全国小水力利用推進協議会の公式サイトでも、
出力1,000kw以下のものが『小水力』として扱われています。
ここでは日本の定義に従い、出力1,000kw以下のものを小水力発電として見ていきたいと思います。
ただ残念なことに、確認できた日本のデータでは、出力1,000kw以上と出力1,000kw未満という区分のものはありましたが、出力1,000kw以下という区分のものは見当たりませんでした。
ですので、出力1,000kw未満のデータについて、ご紹介させていただきます。
『低炭素社会構築に向けた再生可能エネルギー普及方策について(提言)』の『参考資料2』によりますと、出力区分1,000kw未満のものは、
既開発 196,786kw
工事中 3,203kw
未開発 242,190kw
となっています。
このデータによりますと、全てを合計した小水力発電の日本における資源量は
442,179kw相当ということになります。
資源量より大切かも知れない、日本の小水力発電におけるポテンシャルとは?
前項では日本の小水力発電の資源量についてご紹介しました。
しかし、これから小水力発電に取り組むことをお考えの皆様にとって重要なのは、むしろ小水力発電の
ポテンシャルの方かも知れません。
ポテンシャルとは、簡単に言えば
小水力発電の伸びしろです。
日本の小水力発電に、今後の開発の余地がどれくらい残っているかを表すものと考えていただくとよいでしょう。
前項のデータを分かりやすいようにパーセント表示にいたしますと、
既開発 44.5%
工事中 0.7%
未開発 54.8%
となります。
未開発となっているものが全体の
5割以上を占めていますから、今後、まだまだ
開発の余地が残されているということがお分かりいただけるかと思います。
ちなみに全国小水力利用推進協議会による概算では、1,000kW以下の
未開発包蔵水力は300万kWとなっています。
この数値は、あくまで概算ですが、かなり魅力的な数値ということができます。
いずれにせよ、日本における小水力発電のポテンシャルが、
現行の小水力発電の発電量を上回るものであることは確かな模様です。
小水力発電などの再生可能エネルギーの資源量に関するまとめ
・再生可能エネルギーの利用には、設備を設置するためのスペースと、そこに機材を搬入し、工事を行なえる環境が必要。
・コンスタントに一定量以上の再生可能エネルギーの供給が期待できるところでないと、再生可能エネルギーの有効利用は難しい。
・再生可能エネルギーの資源量とは、その国や地域全体で利用可能な再生可能エネルギーを全て利用した場合、どの程度の発電量が見込めるかを表したもの。
・日本の小水力発電の資源量は442,179kw(※出力区分1,000kw未満の数値を紹介)。
・再生可能エネルギーのポテンシャルとは、今後の開発の余地がどのくらい残されているかを表したもの。それぞれの再生可能エネルギーの伸びしろと考えると、分かりやすい。
・日本の小水力発電のポテンシャルは199,989kw(※出力1,000kw未満の未開発の数値)で、資源量全体の5割以上となっている。
・全国小水力利用推進協議会による概算では、1,000kW以下の未開発包蔵水力は300万kWとなっており、非常に有望。