コラム
ヨーロッパにおける小水力発電の現状ってどうなっているの?
2019年4月9日 文 スタッフ-hayashi
現在、世界中で再生可能エネルギーに対する関心が高まっています。
しかし、世界中の多くの国が現在も石炭や石油などの化石燃料に頼っているのが現状です。
その現状を変えるべく、各国では様々な取組みがなされています。
以下の図は、国際エネルギー機関(IEA)が公表している“Key World Energy Statistics 2017”という冊子のデータです。
このデータから世界の発電供給量割合がわかります。
(Key World Energy Statistics 2017より引用)
この表からわかるように、全世界の65%程度が石油・石炭によって電力供給を賄っています。
しかし、ヨーロッパを中心に電力供給を石油・石炭から再生可能エネルギーへ変える努力が広がっています。
ちなみに、ヨーロッパと比較すると日本の小水力発電技術は遅れています。
その理由は、水力開発の大規模化・大容量化を進めてきたため、小水力発電にはあまり関心が持たれてこなかったからです。
その一方で、たとえば、イタリアは水力を除いてエネルギー資源の賦存に乏しく、原子力発電開発を進めてきました。
イタリアにおいては、1960年代までは唯一の発電方法として普及していました。
現在では、原子力発電も2度の国民投票で、停止するに至っています。
その結果として、イタリアのエネルギー源は現在火力が中心であるものの、近年は再生可能エネルギー電源の開発に力を入れています。
イタリアでは、太陽光・太陽熱・風力を合わせて13%の電力供給がなされています。
さらに、日本の環境省にあたるドイツ連邦環境省(BMUB)は、国家気候イニシアティブの枠組みで気候変動対策のための助成を開始することを2018年3月に発表しています。
この助成の対象となるのは、以下の5技術分野です。
なお、ドイツでは、太陽光・風力を合わせて18%の電力供給がなされています。
(1)出力30kW以下の小水力発電設備
(2)エネルギー効率の高い酸素生産機器(病院や研究所、下水処理設備などで利用)
(3)家庭における温水供給からの熱回収(熱交換器付きのシャワー設備など)
(4)地熱貯留ゾンデ用の掘削機器
(5)電動の貨物自転車や輸送容量の大きい貨物用荷台
ここで示されているように、ドイツは新たに出力30kW以下の小水力発電設備に対して助成を行うことを決定しています。
ドイツは、日本の河川よりも勾配が緩く、年間降水量も少ないことから水力発電にはあまり向いていないにも関わらず、積極的に小水力発電所の建設を進めています。
ちなみに、ドイツでは、総発電量に占める再生可能エネルギーの割合が30%に2016年の段階で到達するなど、再生可能エネルギー先進国として注目を集めています。